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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)1898号 判決 1952年12月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍛冶利一の再上告趣意は末尾添付の別紙書面記載のとおりである。

論旨第一点について。

しかし、証拠の取捨、選択は、事実審裁判所の裁量に属するところであり、また、所論伊藤政雄は第一審では共同被告人であったが既に確定判決を受け、第二審公判廷では証人として証言しており、第二審判決はこの証人の証言を証拠に採ったのであるから、所論憲法違反の主張は既にその前提において採るをえない。

同第二点及び第三点について。

憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とは偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所を意味すること並びに同条第二項前段に刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられると規定しているのは裁判所の職権により又は訴訟当事者の請求により喚問した証人につき反対尋問の機会を充分に与えなければならないという意味であり、同条項後段の規定も裁判所に被告人側の申請にかかる証人は不必要と思われるものまですべて取調べなければならない義務を負わしたものでないことは、いずれも、当裁判所大法廷屡次の判例とするところであるから、所論憲法第三七条違反の主張は総べて理由がない。なお、論旨第二点は憲法第三一条違反をも主張するけれども、その実質は事実審の裁量に属する証拠調の範囲を非難するに過ぎないから採用することができない。

よって、刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に則り、裁判官全員一致の意見で、主文のように判決する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔)

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